こんにちは、四代目、土井優慶です
お店で接客しているとよく言われるフレーズがコレ
「あの~、辛口のお酒が欲しいんですけど~」
日本酒でいう辛口っていったいどんなお酒なんでしょうか?
あまりに違和感のない言葉だから、ちゃんと考えたことのない人がおおいはず(笑)
だから、今日はそこんところを深掘りしてみようと思います☆
「辛口=美味しい」は昔の名残り
あまり時代をさかのぼりすぎると話が壮大になり過ぎちゃうので…
今の日本酒ファンに昭和の時代の話をしてもしゃーないですから(笑)
バブル全盛期に起きた「淡麗辛口」ブームの話から!
この時代は重厚なものよりも、よりスマートなものが好まれる嗜好に変化
「アサヒッ!スーパードッ、ラーイ」でおなじみ、淡麗辛口のビールが生まれたのもこの時代
雑味のないすっきりした味わいが好まれていた時代だからこそ、一躍人気ビールとなりました
さらにバブル期には「吟醸酒ブーム」が起こりました
”吟醸酒”って今でこそ当たり前に聞く名前ですが、当時は一部の愛好家だけが知る隠れたお酒でした
もともと鑑評会(コンテスト)用のお酒として仕込んでいた吟醸酒
今までの飲みなれた日本酒の味ではなく、キレイで淡く、すっきりした味わいが特徴
そこに嗜好の変化が相互作用して、日本酒界にも「淡麗辛口」ブームがやってきます
今なお根強く残っている「辛口は旨い!!」はこの時代から始まったのでした
そもそもお酒って辛いの?
人間の味覚には「辛味」を感じる機能がないことは、意外にも知られていません
「えっ!じゃあワサビをなめたときの辛さって何!?」
ふっふっふ…気になるでしょう?
実は「辛さ」は「人間の持つ痛み刺激」によって感じられているのです!!
激辛カレーを食べると「辛いというか、痛い」と表現したくなる…アレと同じです
この理論でいうと…日本酒は痛いアルコール飲料、となりますね(笑)
人間が感じることのできる味覚は”五味”を全部あげるとすれば…
甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の5種類
ここに”辛味”は加わっていないのです
なぜなら、舌の上で痛みを感じる受容体と、味を感じる受容体は全くの別物
じゃあ、日本酒において「痛み」を感じる成分は何でしょうか??
それがね…意外とないんです、辛み成分
辛味は痛み刺激、というのはもう理解できたとしましょう
じゃあ、辛口の日本酒にはこの痛みの成分が含まれていることになりますね?
一般的な「辛み成分」が含まれている食材は…例えばこんな感じ
ワサビ、山椒、ダイコン、トウガラシ、胡椒
それぞれ辛み成分としての正式名称がありますが、今回は割愛しますね
んー、どれも日本酒に含まれそうな成分は見当たらないですねぇ(当たり前ですが)
ちなみにアルコール(エチルアルコール)は、濃度が高いと痛覚として、濃度が低いと甘みと苦みを感じます
だから、唯一あるとすれば「アルコールによる痛み刺激」くらいでしょう
日本酒の甘辛はグルコースの量!!
日本酒の原材料は米であり、麹の持つ酵素と、酵母が持つ発酵作用によって作られます
もうちょっとだけ詳しく説明すると…
米(でんぷん)は麹の持つ酵素により、グルコースへと分解されます…①
グルコースは酵母の発酵作用により、二酸化炭素とアルコールに分解されます…②
日本酒は①と②が同時に行われて出来上がります
他にも「有機酸」や「アミノ酸」といった成分も生成されますが…
日本酒における甘辛を決定づける味わいは「グルコースによる甘味」なのです
グルコースがたくさんお酒に残っている=甘口のお酒
グルコースがほとんど無くなっている=甘くない酒=辛口のお酒
お酒自体が辛いのではなく、甘みを感じる成分が少ないから「辛く感じている」のです
分かりやすい例え話をすると…
砂糖が入っているコーヒー=甘いコーヒー
砂糖の入っていないブラックコーヒー=辛いコーヒー=甘くないコーヒー
イメージとしてはこんな感じです☆
辛口のお酒=甘くなくスッキリしたお酒
日本酒では、甘いお酒はあれど、辛いお酒は存在しない
これは理解できましたね^^
じゃあ…多くの方が言う「辛口のお酒」っていったい何者なんでしょうか?
答えはただ一つ!!
甘くなくて、スッキリとした飲み心地のお酒=辛口のお酒
お酒を造る段階で、残存するグルコースの量を目安として測れる指標があります
この数値を見れば、お酒の甘辛が判断できる…と一般的に言われています
それが…日本酒度(にほんしゅど)です
正しく言うと、グルコースが残っている液体は、水に比べて比重が重くなるので「浮き」をつかって比重を図ったもの…それが日本酒度
この「うき」には目盛りが刻まれていて、浮き沈みによって指し示す数値が…
+になればなるほど、グルコースが少ない=辛口のお酒
-になればなるほど、グルコースが多い=甘口のお酒
…となるわけです!!
ただし!!覚えておいてもらいたいことはもう一つ!!
+でも-でも、二桁くらいになると、はっきり甘辛が区別できます
しかし1~5くらいまでの範囲なら、あんまり信憑性のない数値なのです
+でも甘く感じたり、-でも辛く感じたりします(笑)
日本酒に含まれる他の成分(アミノ酸や有機酸)、香り、温度によっても左右されることも多いので”参考程度”にしておくのがいいですね
まとめ
・「辛口のお酒=美味しいお酒」はバブル期の嗜好の変化によって生まれた方程式
・人間の味覚には「辛味」は含まれておらず、「辛さは痛覚」で感じ取っている
・日本酒の甘辛はお酒の残っているグルコースの量によって決まる
・辛口のお酒=グルコースが少なく、甘くないお酒をいう
・一般的に日本酒の甘辛を示す「日本酒度」は参考程度にしましょう
日本酒も詳しく分解してわかりやすくすると、なかなか奥が深いですねぇ…
今回は「教養としての辛口酒」についてお話ししました!!
また次回お会いしましょう!!