土井商店のこと

酒屋が目指す日本酒の未来~前編~

いつもブログをご覧いただきありがとうございます
日本一お客様に近い酒屋、四代目の土井優慶です^^

今日はちょっぴり酒屋と酒の未来のお話でも…

いつも当店のブログをご覧いただいている皆様には信じられないかもしれません
それもそのはず、皆様はれっきとした日本酒ファンの一人

一時は「日本酒ブーム」ともいわれていましたが、確実に日本酒は飲まれなくなってきています

そんな絶滅危惧種ともいえる日本酒にこだわる「酒屋」とは、一体なにもの?

今日はそんなお話…
長くなってしまうので、前後編に分けてお伝えいたしますね^^

酒屋の「昔」と「今」

私たち「酒屋」に求められる立ち位置は時代とともに変化してきました

約40年前、現社長でもある父が地酒販売を始めた当時
トップスターのようなお酒も存在せず、地域に根差した”地酒”が注目すらされなかった時代

どんなに魅力を伝えても、だれも見向きもしなかった地酒
仕入れても全く売れず、倉庫には山積みの在庫の酒

ある酒屋さんは昔を振り返ってこういいました
「売れなくて倉庫がどんどん圧迫されるから、泣く泣くシンクに流した…」

それが今はどうでしょうか

アイドルのような酒蔵が出てきて、イベントにはその蔵の酒目当てにファンが列をなす
誰もがこぞって求める有名銘柄だって多数あります

血反吐を吐くような時代を経験した酒屋の先代たちは、夢にも思わなかった光景でしょう

昔に比べれば、はるかにいい時代ですね(笑)
しかし最近は様相がだんだんと変わってきました

日本酒ブームは終わった

つい最近までは「日本酒ブーム」なんて呼ばれてもいました
山口県『獺祭』が火付け役になって、フルーティで華やかなお酒が一気に広がっていきました

そんな中、人知れず人気が落ちていった日本酒もありました

ひと世代前の日本酒ブームを支えた、淡麗辛口の新潟のお酒です
昔はなかなか買えなかった人気酒も、最近はスーパーでも買えるようになってきました

消費者に求められる酒と、そうでない酒…見事な二極化です

一方はスーパーのお酒売り場の片隅で埃にまみれ、
もう一方はネットやメディアで華々しく扱われ、

ごく一部の銘柄の過熱した人気ぶりは相変わらず
しかし、コレもごく一部の熱狂的なファンにより支えられているニッチ(すきま)です

さぁ、日本酒はどこへむかう?

普段、この業界にいるとわからなくなることがあります
ブームって結局なんだったのか?

かつての『久保田』のように、だれもが知る日本酒はここ数年現れたでしょうか

答えは「否」
それこそ、あえて挙げるならば山口県の『獺祭』くらいでしょう

ここ10年、話題に挙がっていたお酒ですらも今や名前すら聞かなくなったものもあるくらいです

雑誌やメディアが焚きつけるように猛プッシュすればするほど、酒業界が「日本酒ブーム」の終わりに大慌てしているのが浮き彫りになっていきます

国内の日本酒の消費は右肩下がりが止まらず
その中でも踏ん張って「純米酒」や「純米吟醸酒」は耐えていた時期もありました

けれど、一昨年頃より明らかに空気感が変わりました
酒屋の視点から見ても「酒が売れていない」気がするのです

2019年は、それがはっきりと数字で表れ始めたのです

日本酒を海外へ


日本で日本酒が売れなくなると、新たな販路を広げようとします
国内には見切りをつけて、海外へ販路を広げる酒蔵・酒屋も多く出現してきました

ビジネスの原理原則でいえば「売上が下がれば新たな販路を求める」
これはやむを得ないでしょう、商売ですから

しかし…私は寂しい

「日本酒」とは名ばかり
国内ですら愛してもらえないものを海外に持ち出したところで…いかがなものか

これからドンドン伸びていくのかもしれない
そりゃそうです、今まで「日本酒の輸出」はごくわずかしか行われていません

しかし今現在「日本酒が世界へ」と言いつつも、世界の酒の消費量のたった数%しか飲まれていないのです

世界で飲まれる日本酒があってもいい
世界的にも誇る素晴らしい醸造酒、それがあらゆる国の人たちに広まるのはもちろん歓迎

しかし、国内で飲まれる日本酒は本当にこのままでいいのだろうか…

どんなに戦っても、負け戦

地酒販売を専門として約40年
北海道第二の都市、旭川へ移転して今年の夏で三周年を迎える

多くの人にお酒の魅力を伝えたい一心で、創業の地から地方都市に進出してきました

しかし酒業界を取り巻く状況は刻々と悪くなっていく

まったくもってふがいない
どうして自分たちが愛する酒は、皆に求められなくなっていくのでしょうか?

私たちが旨いと思っているこのお酒は、なぜ日本の大多数の人に受け入れてもらえないのか?

ビールや缶チューハイ、ストロングなんちゃらに負けっぱなし
彼らはアルコール業界で70%近いシェアを持ち、かたや日本酒はたった5.6%しか飲まれていません

超少数派(笑)

100人いれば、たった5人しか飲んでいない日本酒という飲み物
あまりにも…惨めである

もっとやれることはないだろうか?
なぜだ?なぜわかってもらえない?

自問自答する毎日

いよいよ日本酒ブームが終焉を迎え、急激に冷え込む「日本酒の消費」
一方で、加速度的に消費量が増え続ける「ストロング系チューハイ」

酒を飲む人が減っている?
本当にそうなのか?

私の出した答えは違います
「お酒を飲む人が減っている」だけではない、という結論

労働人口の減少、健康問題、飲酒人口の高齢化、不景気による消費の低迷…
そういった「自然減」の要素は大いにあるでしょう

しかし「日本酒の不人気」の本質はソレではないような気がするのです

求められないお酒

早すぎる文明の進歩
10年前に思い描いていた未来の姿は、いともたやすく実現できるほどに速度を増しています

そして、時代の進歩が生み出した新たな価値観は、想像以上に多様化しています

お酒を飲まなくとも、豊かに生活することができる
「お酒を飲む」行為がなくとも、ありとあらゆるものが私たちの生活に豊かさをもたらしてくれる

つまり「お酒以外の価値あるものに、お酒の魅力が負けている」のです

“酔って楽しむアミューズメント”だったお酒
時に「飲みニケーション」ともいわれ、様々なシーンで”楽しみの一つ”として愛飲されていました

けれども、時代が変われば価値観も変わります
時代の進歩とともに、人生を豊かにしてくれるモノやコトがたくさん生まれてきているのです

スマホもそう、YouTubeだってそう、インターネットもそう…

すべて昔は存在しなかったもの
そういう「新たな楽しみ方」にお酒は取って代わられてしまったのかもしれません

逆に言い換えれば「お酒の魅力を知らなくても問題のない人」が増えて、結果として「お酒を飲まない人」が増えたのかもしれません

でも、それは…

私たち、酒業界の中の人たちがきちんとお酒の魅力を伝えられなかったから。
すべての原因は私たち酒屋、酒を造る酒蔵にあると思うのです

今日はこの辺で…

(次号へ続く)