こんにちは☆
日本一お客様に近い酒屋、土井商店
四代目、土井優慶です^^
『業界の常識、世間の非常識』
僕たちにとって当たり前だと思っていたことも、実は一般の方には全然知られていないことって結構ありますよね?
実は…酒業界にもそういうのがたくさん(笑)
普段から当店をご利用いただいている方でも、意外にも知られていないことがありそうなので、
今回は「酒屋って何?」
さらに紹介文でよく書いてある
「当店は●●●の正規販売店です」
「当店は●●●の特約店です」
という謎にも触れていきたいと思います☆
酒屋さんってどんなお店?
『酒屋=お酒を売っているお店』
正式名称でいうと「酒販店(しゅはんてん)」と呼んだりします
大きく分けると2つの酒屋さんがあります
まぁ…実はもうちょっと細かい分類があるのです
- 業務用酒販店
…居酒屋さんなど、飲食店に販売することをメインにする酒屋 - 小売酒販店
…一般の個人客に販売することをメインにする酒屋
業務用酒販店さんは繁華街、つまりススキノやサンロクみたいな飲食店街に配達したりする酒屋さんなので、あまり一般の方には馴染みがないと思います
皆さんがイメージする『酒屋さん』は「小売酒販店」のこと☆
だから今日は「小売酒販店」としての酒屋さんのお話をしていきます^^
酒屋にも得意・不得意があります
一般のお客様を相手に商売をしている酒屋さん
実は…
どこからお酒を仕入れているか、によって「得意・不得意」が分かれます
お酒の仕入れ先として挙げられるのは2つ
- 問屋を経由してお酒を仕入れる場合
- 酒蔵から直接お酒を仕入れる場合
どちらをメインとしているかによって、まったく品ぞろえが異なります!
問屋を経由してお酒を仕入れる酒屋
問屋とは…全国各地の酒造メーカーから商品を仕入れて、多くの取引先(スーパー、酒屋など)に販売する業種です
テレビCMに流れてくるビール、日本酒、焼酎などはほとんどの場合、問屋を通じて様々なところで販売されます
なぜかって?
メーカーにとって、問屋を通して製品を販売するのが最も効率的だからです☆
なぜなら、問屋はたくさんの取引先を抱えているので、商品をアチコチに展開するときには流通の面で最も優れています
メーカーが一軒一軒、取引先を探さなくても
問屋には各地の酒屋さんやスーパーから注文が舞い込んできます
メーカーは不慣れな取引先開拓をせず、造ることに専念できるのです^^
問屋さんはラインナップを豊富にすれば、各地のスーパーや酒屋からドンドン注文がもらえるので一石二鳥!
酒屋にとっては一か所ずつに注文をせずとも、問屋さんに注文すれば、ほとんどの商品がそろうので手間がかからない
メーカー・問屋・酒屋の三者すべてにメリットがあります☆
けれど…
お客様にとっては
「あちこちで似たようなお酒が並んでいる」
「あっちの店より、こっちの店のほうが高い」
問屋さんを経由して商品を仕入れると、同じ問屋さんと取引している酒屋さんではラインナップに差がなくなります
そして「たくさん売る店には安く納品」して、「あまり売らない店には高く納品」するので、
お客様にとっては、規模の大きいお店ほど安く買えることになるのです
まとめると…
- 消費者は価格の差はあるけど、どこでも買うことができる
- とくにテレビCMで宣伝されるような商品が多い
- 問屋が扱ってるものであれば、商品を取り寄せるのがスムーズ
といった感じです^^
酒蔵から直接お酒を仕入れている酒屋
一方で「酒蔵から直接」お酒を買い付ける酒屋さんもいます
「酒蔵から直接」というのは…
- 1:1で直接契約してお酒を仕入れている
- その酒蔵の商品しか仕入れられない
- 注文ロットが大きいので、欲しい時に注文できない
- 安く売ることも高く売ることも原則禁止
一見すると縛りが多いように見えますが、メリットもたくさんあります☆
酒蔵から直接仕入れするメリットは…
- 問屋では手に入らない商品がほとんど
- お店の品ぞろえが他店と差別化できる
- 雑誌の特集などに取り上げられるような話題の酒蔵が多い
- 利益幅が大きい(問屋流通に比べて)
規模があまり大きくない酒蔵、日本酒・焼酎メーカーさんとの取引ではこのケースがほとんど
昭和後期、いまから40年ほど前に確立されたスタイルで、
こういう酒屋を『正規販売店』『特約店』と呼ぶようになりました
正規販売店、特約店ってどんなお店?
問屋流通で我慢を強いられた酒蔵
酒蔵から直接仕入れる方法が確立される前、販売ルートといえば…
酒造メーカー→問屋→酒屋→消費者というのが一般的でした
その常識にメスを入れたのが酒蔵→酒屋→消費者という独自の販売ルートを目指した中小の地酒メーカー
※ちなみに…一番最初にこの方法を取り入れたのが新潟県 朝日酒造『久保田』だといわれています
40年ほど前にさかのぼりますが…
昭和50年代、酒屋同士の安売り合戦が繰り広げられる中で、しわ寄せで苦しんだ酒造メーカー
しかも、
酒蔵さんがどんなこだわりで作っているか…
酒屋さんはきちんと管理してくれているか…
消費者からどんな声が上がっているか…
問屋を経由したお酒の販売では、こういう細かな部分がまったく見えなくなってしまう弊害もあったのです
当時、すでに安売り合戦のしわ寄せで酒造メーカーが次々に廃業し始めていました
このままでは「日本酒の未来はない」と考えて、
- こだわりを伝えてくれる酒屋さんとだけ直接契約
- 酒屋同士の安売り合戦が起きないように価格を一律に
- 同じエリアで酒屋が競合しないように商圏を考慮
それを背景にして『特約店制度』が誕生し、『正規販売店』『特約店』と呼ばれる酒屋が出現しました
特約店制度って、具体的にはどんな契約?
酒蔵と酒屋の関係の直接契約する『特約店制度』は…
- 酒蔵が指定した価格で販売
…安売りも高値販売も原則としてダメ - 横流しの禁止
…横流しはブランド価値が下がるから - 酒屋が酒蔵を選ぶのではなく酒蔵が酒屋を選ぶ
…共存共栄のために商圏がかぶらないようにする - 冷蔵設備が前提条件
…冷蔵設備の有無によっても不契約もありうる - 年間の最低販売数量の厳守
…月に●ケース、年に○ケース以上仕入れること
こういった契約条件をすべて満たし、自分たちが取引したい酒蔵にアポを取り、時には何度も何度も足を運び…
ときに10年足しげく通っても、お取引が叶わないことだってあります(涙)
1:1の直接契約なので一軒ずつ取引する酒蔵さんとお取引をスタートさせていく
簡単にいえば…
「うちの蔵の酒はあんたの店に任せた」
酒蔵が丹精込めてつくったお酒を取り扱えるということは、
酒蔵から信頼できる酒屋であることを認めてもらった…ということ!!
こういう酒屋さんを「一般的な酒屋」と区別するために、
『地酒専門店』や『和酒専門店』と呼ぶ人たちもいます☆
『特約店』以外で買えちゃうお酒は「非正規流通品」
『特約店』と呼ばれる、酒蔵が認めた地酒専門の酒屋さん
一般のお客様が『特約店』で購入する一番の恩恵は…
価格が守られていること=定価販売
つまり…
- どんなときに買っても価格が変わらない
- 吊り上げられたプレミア価格で買わずに済む
お酒の中には「希少性」「話題性」から、定価を大きく超える高値で販売されていることがあります
そういうお酒をプレミア酒と呼んだりもします
ただし!!
先ほどお話しした『特約店』では「定価販売」しか許されていません
プレミア価格で高値販売することはできない契約です
つまり…
蔵元が定めた価格以外で販売しているお店は『特約店』ではない
ということになります
なぜこんなことが起きるのか?
その答えはたった一つ…
悪意ある『特約店』による横流し品
一般消費者を装った『流通業者』による大量購入からの横流し品
横流しによる「非正規流通品」なのです
法律的には問題ありませんが…
『特約店』としての契約を結ばないと扱えないはずのお酒
それなのに…
スーパーマーケットやディスカウントストアでも買うことができます
これらは特約店ではない販売先が売っている『非正規流通品』
値段は高いです!!
なぜならば…
- いくつもの業者を経由するのでマージンがかかっている
- そもそも高値で売っても購入する消費者がいる
ちなみに僕たち酒屋は、酒蔵の指定する価格を「定価」と呼びます
しかし、法律上の解釈では…
- 酒蔵の『定価』は法的には”希望小売価格”
- 特約店も、そうでない店も、基本的には売価を自由に設定できる
- 独占禁止法によって、本来は売価を指定することはできない
え!?矛盾してない!?
『特約店』は定価以外では販売しちゃダメなんじゃないの!?
『特約店』は酒蔵の指定する価格で売って、そうでないお店はプレミア酒を高値販売している
実は…
酒蔵と酒屋との『特約店』制度において、価格の設定はすべて紳士協定によるもの
法的な拘束力はありません、残念ながら
僕たち酒屋は、信頼関係で価格をまもっている「だけ」
むしろ「非正規流通品」が安く売られても、高く売られても、法的にはなーんの問題もないのです!!
「非正規流通品」と「正規販売店」
多少高くても「非正規流通品」を買う消費者もいますが、僕たち酒屋からも決してお勧めできないのにはワケがあります
『非正規流通品』の大きな欠点は…
- 非正規流通=管理外のお酒なので味わいの保証ができない
- 味わいは劣化している危険性が高いのに値段が高い
酒蔵にとっては大きな迷惑(笑)
『特約店』では蔵の指定した管理方法で厳密に保管、販売がされているのに…
『非正規流通品』は誰がどんな場所で、どんな状況で管理されていたものなのかが全く分からない
もしかすると…
- 常時要冷蔵が必要なのに、常温で放置
- 直射日光がバンバン直撃
- 何人もの手を渡っているので価格もドンドン吊り上がる
ってこともザラで、酒蔵さんたちはあまりいい思いをしていません
よく聞くのが「非正規流通品」を飲んだお客様からのクレーム
「美味しいって噂だったから買って飲んだのに美味しくない!」
…そりゃそうですよね、お客様はカンカンに怒ります
こんなトラブルもあるから
酒蔵は自分たちが認めた『特約店』で買ってほしい
一般の消費者には『特約店』の仕組みはちょっとわかりづらい
だから!
消費者からもわかりやすく!!
当蔵のお酒を購入するときは『正規販売店』で購入してください
と表現するようになりました☆
正規販売店でお酒を買うメリットは?
まとめになりますが…
酒蔵と『特約店』契約を結んでいる『正規販売店』では
- お酒を保管状態が良く、味わいが劣化していない
- 専門知識を持つ店主やスタッフが常駐
- 安くもなく高くもなく、適正価格で購入可能
- たくさんの種類から選ぶことができる
とくに…
たくさんの種類から選ぶことができる
こういう酒屋さんでは、複数の酒蔵と『特約店』契約を結んでいて、50~100近い酒蔵から商品を仕入れています
年間にすると1000~3000種類くらいのお酒を取り扱っていて、とてつもない種類のお酒に圧倒されるはず
その中から「好みのお酒」を選ぶのは一苦労!!
だから専門知識をもつ店主やスタッフがいると…
- 予算
- 味わいの好み
- どんなシーンで飲むのか
- どうやって飲みたいか など
飲む人の年齢、性別、好みに合わせて、
ビギナーにはわかりやすく、
玄人には本格的な知識をまじえて、
そのために酒屋があるのです!!
思い出してみてください…
酒蔵はなぜ『特約店』という制度を使って、
酒屋に販売をお願いしているのか?
それは…
歴史やポリシー、製法や原料など、どんなこだわりを持ってお酒を造り、それを酒屋が酒蔵に代わって消費者に伝えてくれるから!!
だから…
僕たち酒屋は、酒蔵とお客様に常に求められ続けるようにならなきゃなりません^^
【余談】酒蔵と酒屋の課題
とはいいつつも、時代は40年が過ぎました
ネットショップができたり、
酒屋も後継者不足で廃業するところも年々増加
少しずつですが、酒蔵も酒屋も課題が増えてきました
例えば…
『特約店』という仕組み
コレって…もう崩壊しているんですよ(苦笑)
だってスマホ一つで買い物できちゃう便利な時代
『特約店』であり『正規販売店』がネットショップで販売するとしたら?
北海道に住む人が、東京の『正規販売店』のオンラインショップでお酒を買う
あれ?
おかしな現象が起きていますよね?
ここで『特約店』制度を見直してみましょう☆
- 酒蔵が指定した価格で販売
…安売りも高値販売も原則としてダメ - 横流しの禁止
…横流しはブランド価値が下がるから - 酒屋が酒蔵を選ぶのではなく酒蔵が酒屋を選ぶ
…共存共栄のために商圏がかぶらないようにする - 冷蔵設備が前提条件
…冷蔵設備の有無によっても不契約もありうる - 年間の最低販売数量の厳守
…月に●ケース、年に○ケース以上仕入れること
酒屋同士で販売するエリアが重複しないようにしていたはずの『特約店』制度
これって、もう成立していませんよね??
時代の変化に『特約店』制度が置いていかれてしまっているのです…
…と、まぁ様々なゆがみが出ていている業界なのです(涙)
※あくまでも個人の主観に基づいた見解であって、特定の酒蔵や酒屋を批判しているわけではありません、念のため
消費者のためにできること
酒蔵はきちんと正規販売店を公表する
一般のお客様はモノを買うとき、どこで買えるかわかりません
ショッピングモール?
スーパーマーケット?
コンビニ?
一般的な感覚なら「よく行く場所に売っているもの」が「ちゃんとしたもの」だと思い込んでしまいます
スーパーやコンビニに売っていなかったら?
大多数の消費者はGoogleで「○○ 販売店」って検索しますよね?
どこの酒屋に行けば買えるのか
酒蔵の公式サイトで消費者のための情報提供をした方がいいと思います☆
なぜか…
酒蔵の公式サイトって正規販売店を公開しているところが意外と少なくて、「電話してくれ」「メールしてくれ」って書いてあるんですよね(苦笑)
酒屋は消費者に向けてもっと情報発信する
どうしても酒屋は誤解の多い商売です
- 居酒屋さんの仕入れのためのお店
- 詳しくないと酒屋に入りづらいというハードル
きっと僕たち酒屋にとって
「え、そんなこと?」
と思うようなことでも、一般のお客様は尻込みしてしまっているはず
だから僕たち酒屋は、もっと消費者にむけて
- 酒屋でお酒を買うことのメリット
- 正規販売店はどんなお店なのか
- 入りやすく、何も買わなくとも出やすいお店作り
を伝えなきゃいけないなぁ…と思うのです☆
だから「日本一お客様に近い酒屋」
だから僕たち土井商店は…
日本一お客様に近い酒屋
を目指しています^^
一人でも多くの人たちに、美味しいお酒を、適正な価格で飲んでもらいたい
お酒のある生活の豊かさ、人生の楽しさを伝えたい
そして酒屋でお酒を買うことで…
- 酒蔵がどんなことを考えてお酒を造っているのか
- 日本酒の歴史や文化
- 製法や原料
全員でなくてもいいから、そういう人たちがちょっとずつ増えてくれるとしたら、
きっと酒屋も、酒蔵も、そして飲んでくれるお客様も…
お酒のある人生を知ると、お酒のない人生はちょっと寂しい
そんな風に感じてくれるのかな、と思います☆
ちゃんちゃん!!