こんばんは!四代目、土井優慶です^^
春というにはまだほど遠い、北海道の三月
でも、お酒を愛する皆様にはちょっぴり気にする季節がやってきます
北海道もあと一カ月もすれば…ずいぶん暖かくなってきます
気温が上がってくると、お客様から”ある質問”が増えてきます
それは…「要冷蔵のお酒」の取り扱い方法
お酒のラベルを見てみると「要冷蔵」と表記されているお酒があります
「車で帰るのに○時間かかるんだけど、大丈夫?」
「要冷蔵って書いてあるけど、クール便のほうがいいですか?」
「ずっと冷蔵庫に入れておかないと腐るの?」
聞きたくてもなかなか聞けない、皆様の疑問にお応えします
実は…
お酒の「要冷蔵」には大きく分けると、3つの意味合いがあります
1.加熱処理していない”生酒”だから要冷蔵!!
日本酒を常温保存できるようにするために、日本酒では火入れと呼ばれる過程を経る必要があります
火入れとは…一体何でしょうか?
簡単にいえば…加熱処理による殺菌のこと!
“殺菌”とはいっても、バイ菌が入っているわけではないですけど(笑)
日本酒は酵母や麹の働きによって、発酵させて造られます
お酒を造る時に働いてくれた酵母や酵素の活動を止めてしまうのが目的
その加熱処理をしていないお酒がいわゆる「生酒」となるわけです
火入れをすることで、酵素を失活(活性を失わせる)させるのと同時に、お酒をだめにしてしまう雑菌(火落ち菌)を殺菌する目的があるのです
加熱処理をしないお酒の中では、当然ですが酵母や酵素が活動している状態※で生き続けます
こういう反応は、温度が上がると活動が盛んになることが知られていて、結果としてお酒の味がどんどん変化してしまいます
冷やしている状態だと、その反応は鈍くなるので味わいは変わりづらくなります
つまり「生酒」が”要冷蔵”である理由は味わいの変化が極端になるのを防ぐため!
“要冷蔵”のお酒の中でも、生酒はしっかりと冷蔵保管しておいたほうが良い…というのが正解です(開封の有無を問わず)
※下線部について
簡単な表現に直していますが、実際には”酵母”は濾過によって取り除かれています
お酒の中に残っているのは”酵素”がほとんどです
2.生酒じゃないのに…要冷蔵?
恥ずかしい話…私も数年前までチンプンカンプンだったのがこのパターン(笑)
普通に考えてみると…
生酒ではない=火入れしている=酵母や酵素は失活している(死んでいる)?
要冷蔵じゃなくてもよさそうなものですが…違います
先に種明かしをするならば…「生酒」ではないのだけど、冷蔵保管したほうが良さそうな場合に使われる「要冷蔵」もあるのです
…紛らわしいよね、ホント(苦笑)
実は「火入れ」には2段階の工程があります
一段階しかなされていないものには「生詰(なまづめ)」や「一度火入れ」「生貯蔵酒」という表記があります
一回しか殺菌(火入れ)していない理由は、二回火入れするとフレッシュな味わいじゃなくなってしまうから
一回火入れ=フレッシュで、しかも生酒ほど取り扱いが面倒くさくないお酒
ただ、デメリットもあります
・火入れはしていても、やはり冷蔵しておいた方が香りや味が保てる
・ごくまれに、お酒をだめにする火落ち菌が残ってしまうこともある
だから“念のため要冷蔵”とすることが多いのです
酒蔵を出荷した瞬間、一回だけ火入れしたフレッシュな味わいを、出来る限り保ったま消費者に楽しんでほしい
そんなお客様想いの酒蔵もあれば…
自社のブランディングの一つとして、「うちの酒は繊細だから要冷蔵」と謳うこともあったり(笑)
さらには…
「ちょっとくらい常温で放置されたって、うちの酒はヤワじゃないから大丈夫」
そんな酒蔵もいたりして、そんなお酒は「生詰め」「一回火入れ」でも”要冷蔵”の表記が無いこともあります
まぁ…お察しの通り、解釈が色々あるわけです(苦笑)
開封する前は冷暗所もしくは冷蔵庫で、開封後は冷蔵庫保存するのが良いでしょう!
あ、でも一番は「開封前後問わず、冷蔵庫」が理想ですけどね☆
3.冷やしておかないと危険な要冷蔵!!
これは…冷やしてないとヤバいことになる場合ですね(笑)
栓が飛んだり、ビンが破裂したり、吹き出したり…
このタイプの要冷蔵は“スパークリング”や”活性酒”のお酒に多い表記です
「生酒」であるか「火入れ」であるかは別として、冷やしておかないと吹き出したり、栓が飛んだり…飲む時に何らかの支障がある場合は”要冷蔵”にしています
酒蔵からも「くれぐれもお客様に説明してください」と注意書きが添えられることもあります
この場合は、開封前後問わず、可能な限り冷蔵庫のほうがいいでしょう
よくある誤解…
「日本酒は冷やしておかないと腐るのでは?」という誤解があります
実際のところ、生肉や生魚のように腐敗して飲めなくなることはほとんどありません
床に落とした不潔なキャップで再度栓をしたりすると、雑菌が増えて傷むこともありますが…常識的な範囲でキレイに扱えば大丈夫!
そして最大の疑問は…
要冷蔵のお酒を冷やさないで保管したらどれくらい味が変わるのか?
この答えは…「状況や個人の味覚による」というのが正解でしょう
20℃で1日放置するのと、15℃で一ヶ月放置するのでは、両者ともに全く味わいは違うはず
「生酒」は当店では5℃の冷蔵庫に入れて管理しておりますが、それでも味わいの変化は完全に止めることはできません
極端な話、マイナス5度近い氷温庫ですらもわずかながらに変化してしまいます
大切なのは「元々の味わいと大きくかけ離れないこと」
個人それぞれの味覚によって“許容範囲”というのも違うので、どこまでが「美味しく飲める味わい」なのかは判断が難しいところ
ここ北海道では帰宅までに5時間かかったりするのはよくある話なので、それぞれ個別にご説明しております
クーラーボックス持参される方や、保冷剤を使って持ち帰る方もいます
全く気になさらず、そのままぶら下げて帰る方もいます
酒屋としての本音は「要冷蔵が無くなればいい」という極論(笑)
家庭の冷蔵庫のスペースだって限られているし、そもそも気を使わなきゃいけないと面倒くさいでしょう
だから、本当はあまり神経質にならずに気軽に楽しめたほうがいいんですけどね…
それでもどこの酒蔵さんも、多くの”要冷蔵”のお酒をリリースしていて、酒屋も倉庫の冷蔵スペースとにらめっこする日々
むしろお客様にフレッシュな味わいを届けるために、以前にもまして”要冷蔵”が増えてきているのがなかなか悩ましい
ただ、皆様に最もご負担が少ないのがベストだと思っていますので…
・宅急便での”クール”はお酒の種類や、気温に合わせてご案内
・お持ち帰りいただいたら、すぐに冷蔵庫に入れる
・厳密な管理が必要なものだけは、きちんと個別にお伝えする
当店では「皆様のご負担にならない方法」「味わいにも変化が少ない方法」をご案内しております
なにかわからないことがあれば気軽にお声掛けくださいね^^
【ちなみに…】
ギフトを宅急便で送る場合だけは…「要冷蔵」のお酒はクール便をおススメします!
荷物を受け取った方が「要冷蔵のお酒が常温で届いた!!」とビックリしてしまうので(汗)
クール代金は安くないのだけど、お相手様に誤解を招かないための”気遣い”とおもってご容赦ください…
今日は「日本酒の要冷蔵」についてお伝えしました!!
ではまた!!