いつも当店をご利用いただきありがとうございます
四代目、土井優慶です
この度、ご縁がありまして愛知県、合資会社柴田酒造場が手掛ける日本酒「孝の司(こうのつかさ)」の取り扱いが開始となります
ここ北海道では本年まで取扱店舗がありませんでしたが、今年6月より先行して札幌の酒屋、根本商店さんで購入することができるようになりました
じつは柴田酒造場の柴田社長から「他にいい酒屋はありませんか」と相談されていたことから根本さんを紹介し取引に至った経緯があります
こうして柴田社長とはすでに何度も情報交換して意気投合していたものの、
「UGO」「唎酒」などの新規取扱の紹介や、他業務の都合により弊社での発売開始を待っていただいていました
2024年10月から私たち土井商店は「孝の司」の正規販売店となります
札幌圏は根本商店さん一軒のみ、そして旭川および道北地区では初めての正規販売店となります
「孝の司」は柴田酒造場の柴田ご夫妻が、地元に愛された名を冠して、愛知の里山の風景を全国へと伝える日本酒です
2024年春に埼玉で行われた日本酒イベント「若手の夜明け」で出会った、情熱的で、知性的で、そして地元愛への愛情に満ちあふれる日本酒です
私が「孝の司」を取り扱った理由は、酒蔵の紹介文の最後に記載しております
是非、旭川をはじめ道北の皆様にも広く楽しんでいただければ幸いです
【新規取扱】「孝の司(こうのつかさ)」
「孝の司」醸造元 柴田酒造場
創業1830年、200年ほどの歴史のある愛知県岡崎市の酒蔵、柴田酒造場
日本酒「孝の司」は5代目当主が”病気がちな父親に、親孝行の息子が酒の泉を見つけて、それを飲ませたら病気が治った”という民話をもとに名付けたものです
約100年にわたって地元岡崎で愛されてきたブランドであり、地元では”安くてうまい酒”の代名詞として知られていました
9代目蔵元である柴田佑紀氏は、もともと酒蔵血族の後継者ではありませんでした
地元岡崎市出身で県内大学を卒業後、自動車関連部品会社に就職。管理会計部門を担当して三年間の米国駐在経験のある人物です
高校の同級生だった奥様、充恵さんとの結婚を機に、奥様のご実家だった柴田酒造場に入社・婿入りをしました
新しきと古きの、葛藤
若き柴田夫婦が酒蔵の未来を見据えたとき、やはり地元だけでなく、県外の市場へも打って出たいと考えました
事実、地元向けの「安くてうまい酒=経済酒」は愛知県だけでなく、どこの都道府県でも高齢化と人口減少によって消費量が減少しています
そのため、若い後継者はみな一様に、県外のマーケット(主に首都圏)を意識したブランドづくりを行います
しかし、若き柴田夫妻は県外への展開を考えていく中でも『決して切り離せないモノ』がありました
それは地元の高校で出会い、そして結婚した二人だからこその“地元への深い敬意と愛情”でした
日本酒業界では、専門店や地元以外のエリアに向けて日本酒を販売する際、従来のブランドとは異なる新ブランドを展開するのがセオリーです。しかしながら私たちはそれをやりたくなかった。なぜなら柴田酒造場は日本酒「孝の司」があって、100年以上、地元を中心に愛されてきたから。
これまでの100年は今から作り出すことはできないし、一般的な商品寿命と言われる10~15年という期間で、また新しいブランドを繰り出していくのも、私たちのイメージではない
長く地元に愛された”これまでの100年”に敬意を払うことで”これからの100年”も脈々と続いていく
日本酒「孝の司」を地元岡崎から、全国へ愛されるブランドへと育てたい。それによって地元の人たちも岡崎にほこりと愛着を持ってくれるようなブランドが私たちの理想です
日本酒「孝の司(こうのつかさ)」の酒造り
彼らの酒造りのテーマは「酒造りを中心に地域価値を向上させ、世界中から人が集まる場所へ」
“地元への敬意と愛情”を軸に考える柴田夫妻は、蔵のある原風景をたよりに日本酒「孝の司」を改めて見つめなおしました
超軟水「神水(かんずい)」
愛知県岡崎市は良質な花崗岩の産地として、日本三大石品生産地として知られています
柴田酒造場が井戸を持つ自社所有の山林は、その山の岩盤が硬い花崗岩を基盤としており、雨水が地下深くまで浸透しないために、ミネラルが極めて少ない超軟水の水が湧き出ています
その井戸から湧き出る水は、柴田酒造場が位置する地域の名を冠して「神水(かんずい)」と呼んでいます
日本で採取される水の平均硬度は60mg/Lなのに対し、柴田酒造場で酒造りに使用する「神水」は約1/20となる3.5mg/L
水の硬度はカルシウムとミネラルの含有量を数値化したものですが、じつは酒造りにおいて重要とされる数値の一つでもあります
一般的な酒造りでは、発酵過程においてミネラル分を酵母の栄養素とするために、軟水ではなく硬水のほうが向いています
つまり硬水は日本酒の発酵を健全に進めるうえで大切な要素ともいえる一方で、軟水は酒造りには向いていない水質なのです
そのためミネラルの少ない軟水を使用しなければならない酒蔵の一部では、発酵の助剤としてミネラルを人工的に添加することもあります
柴田酒造場で行われていた酒造りでも、かつてはミネラル助剤を使用していましたが
「この水を生かす=風土を生かす=地元を伝える」こととして超軟水「神水」と向き合う酒造りを行っています
日本でも類を見ない超軟水「神水」によって生み出された「孝の司」は、圧倒されるほどの柔らかな味わいをもつ酒となります
地域価値の向上に向けた取り組み
柴田酒造場では他にも酒造りのテーマ「酒造りを中心に地域価値を向上させ、世界中から人が集まる場所へ」への取り組みを加速させています
- 水の良さを最大限に生かすための設備導入
- 地元米”夢山水(ゆめさんすい)”の積極的使用
- 高齢化による離農した田を買い受けて自社田での米づくり
- 農薬化学肥料を使わない米づくり
- 古い土蔵をリノベーションしたカフェ
- 空き家を利用した一棟貸の宿泊サウナ施設(2025年予定)
現在のラインナップ
(写真左より)
■ 孝の司 純米吟醸
□ かすかに残る微炭酸、芳醇ながらも抜け感のある柔らかな味わい。超軟水の特製と、蔵の個性を上手に表現した。四代目が春に埼玉で出会って驚いた酒の一つ。
□ 1800ml 3,300円 / 720ml 1,800円
■ 孝の司 まどろみ 純米大吟醸
□ コンセプトと味わいがこんなにもリンクした酒は飲んだことがない。やることをすべて終えた夜に「一杯だけ」と傾ける。トロリとした舌触り、とろけるような旨み、そして儚い余韻。つい杯がすすんで気が付けばウトウト。まさに”まどろむ酒”。高価だが後悔はしない。
□ 720mlのみ 2,500円
■ 孝の司 秋酒 純米吟醸
□ 超軟水「神水」の柔らかさと、半年間の熟成によって生まれた奥行のある伸びやかな旨さ。常温近くでゆったりと飲むと身体も心もほぐれる。
□ 1800ml 3,400円 / 720ml 1,900円
■ 孝の司 自社田栽培 試験醸造 純米吟醸(写真なし)
□ 入荷直後のため、テイスティング済んでおらず割愛
□ 720mlのみ 2,400円
土井商店が「孝の司」を扱う理由
日本酒「孝の司」との出会いは、じつは2023年秋の「若手の夜明け」にまでさかのぼります
一年前の日本酒イベントで出品酒をすべて飲む機会に恵まれましたが、じつはほぼ記憶に残っていないのです
“出会った”というにはあまりにもインパクトが薄く、大変失礼ながらも、今振り返ると「ああ、いたかも」くらいな印象でしかありませんでした
そして2024年春に埼玉で行われた「若手の夜明け」
イベントに出店していた日本酒「雅楽代(うたしろ)」醸造元、天領盃酒造の加登社長に
「今回出店している酒蔵で、ここぞという蔵はある?」
そう聞いたのは、加登社長と私はお互いの”舌”を信頼しており「加登さん(土井さん)のテイスティング能力は他よりも頭一つ抜けている」と互いに評価しているから
すると、加登社長はたった一言だけ「孝の司」と
加登社長に連れられて柴田酒造場「孝の司」のブースを訪れ、そこで柴田社長と初めてお会いしました
首都圏のイベントでは土井商店は無名なので「はて誰が来たのだろうか」とややけげんな表情(笑)
年のころは若く、童顔で笑顔の素敵な青年という印象も強く残っていますが、「春の限定酒」と「まどろみ」を飲んで驚異的な柔らかさにひたすら驚いたのを覚えています
思わず「うま。」とつぶやいたときの、柴田社長のパッと明るくなった表情は忘れることはないと思います
「いまリブランディングと酒質の再設計をしまして」とすぐに酒の説明をしてくれましたが、他のお客様の都合もあり、十分にお話を伺えずにその場を離れました
1カ月ほど経った頃に、柴田社長から「ぜひ改めてお会いしたい」と申し出がありました
6月にはわざわざ北海道まで足を運び「孝の司」や蔵のこと、そして将来の展望について情熱的に語ってくれました
とくに、管理会計分野の出身である柴田社長は、娘婿の立場ながらも先代社長の理解を得て、抜本的な経営改善と設備投資に心血を注いでいます
その成果もあって、高額ながらも近代的な設備の導入による酒質の改善が、近年の味わいの変化に大きく寄与しています
また自社の利益だけならず”地元への敬意と愛情”を、酒造りと蔵の取り組みでどう表現していくのか
安直に、従来のブランドとは別の、新たなブランドを立ち上げるのではなく、
あくまでも「これまでの100年があるから、今の私たちがいる」と地元への恩義を胸に強く抱くその姿
いま私たちが思い出せなくなりつつある郷土愛の一つの形が、そこにはあります
酒造りの原点に立ち返り、古くに伝わる井戸から湧き出る超軟水「神水」を再定義したリブランディング
それは地域課題に向き合おうとする、地元に愛された酒蔵の”次への一歩”にしか過ぎません
酒造りだけでなく、廃業する農家の田を譲り受けた自社米栽培、高齢化による空き家を活用した宿泊事業、古い土蔵をリノベーションしたカフェ
すべては「この岡崎を、地元の人たちが誇らしく思えるように」
地元に愛された日本酒を全国に届け、世界へ届け、それが評価されるようになれば…
きっともっと、自分たちが愛した岡崎を誇りに感じてくれる地元の人が増えてくれるはずだ
かつて自分たちを育んでくれた岡崎の地が、過疎で廃れていく姿を目の当たりにしたアメリカ帰りの若者
「いままでの100年があったからこそ」という彼の言葉は、言葉の持つ意味以上の重みをもったものでした
しかし柴田社長の目は焦燥にかられたものではなく、いつも曇りがなくキラキラと輝いているのです
屈託のない笑顔で、熱量あふれるほど多く語るその姿に、年々着実に進化するその酒質よりも、私はほだされてしまったような気がします
超軟水「神水」のポテンシャルを活かすその味わいと、酒造りだけにとどまらず地域課題の解決に至るまで
積み重ねてきた歴史を、地元愛とともに重んじる柴田夫妻のあり方
それが私たち土井商店が「孝の司」を取り扱う理由です